うどん部屋

そこそこ家事をがんばるパパの、育児と読書中心の雑記ブログ

「人狼城の恐怖」読書感想文

おはようございます、うどんです。

 

先日、二階堂黎人さんの「人狼城の恐怖」を読み終えた。

といっても2回目になるが。

 

本格ミステリ好き以外では、タイトルさえ聞いたことない人が多いのではないだろうか?

この作品は名探偵・二階堂蘭子シリーズの第5作目にあたり、著者・二階堂黎人さんの代表作でもある。

 

1999年・本格ミステリベスト10”第1位”

【10周年】本格ミステリ・オールベスト・ランキング”第4位”

【20周年】本格ミステリ・ベスト・オブ・ベスト”第4位”

 

等々、ランキングの受賞歴も華々しい。

特に下の2つは、”過去10年・20年の中で最も面白い本格ミステリ・ランキング”となっている。

つまり、この「人狼城の恐怖」は”過去20年の中で4番目に面白い本格にステリ”ということになる。

ちなみに上位陣は「首無の如き祟るもの」「容疑者Xの献身」「ハサミ男」等々豪華すぎるラインナップになっている。

その中で4位なのだから、面白いに決まっているのだ。

 

私は「人狼城の恐怖」で二階堂蘭子シリーズを知り、「地獄の奇術師」「吸血の家」「ユリ迷宮」と読んだ。

(「ユリ迷宮」は読むには読んだけど、つまらなくて感想文も書けませんでした) 

 

udon1129.hatenablog.com

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他の作品を全然見かけず読めないので、仕方なく復習として読み返したが、相変わらず面白い。抜群に面白くて、とてつもなく分厚い。文庫本でも重くて手が疲れる。

シリーズの最初に読んだ本が「人狼城の恐怖」だったので全員のキャラが分からなかったが、2周目はある程度理解して読めたので、一回目より楽しい部分も多かった。

 

前置きが長くなったが、せっかくもう一度読んだのだから、感想を書きたいと思う。

 

人狼城の恐怖/二階堂黎人

 (5点満点)

おもしろさ:★★★★★+★

おすすめ度:★★★

中村警部 :登場無し

 

あらすじ

 

ドイツにある【銀の狼城】、フランスにある【青の狼城】、2つの城で壮絶なる連続殺人が発生する。事件解決のため名探偵・二階堂蘭子は欧州へ飛び、空前絶後の謎と恐怖に巻き込まれていく…。

 

「第一部ドイツ編」

ドイツにある【銀の狼城】で起きた連続殺人の話。662ページ

 

「第二部フランス編」

フランスにある「青の狼城」で起きた連続殺人の話。726ページ

 

「第三部探偵編」

二階堂蘭子人狼城殺人事件に関わっていく過程。554ページ

人狼城の恐怖 第三部探偵編 (講談社文庫)
 

 

「第四部完結編」

人狼城の謎、すべてに答えを出す最終章。645ページ

人狼城の恐怖 第四部完結編 (講談社文庫)
 

 

 

合計2587ページ。なんと、世界一長い推理小説としてギネス記録になっているらしい。

 

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積み重ねるとこの分厚さ。まさに恐怖。

(比較がわかりづらくてすいません)

 

あらすじをなんとなく伝えたところで、感想をまとめていきたいと思う。

 

①とてつもない分厚さと読み応え、なのにほとんど無駄のない構成

 

恐らく「人狼城の恐怖」を読み終えたすべての人が感じるのは、これではないだろうか。

2587ページというギネス級のボリュームながら、全てが複線やトリックになっている。

読む前は絶対に信じられないが、読めばわかるこの凄さ。

ちなみに"ほとんど"というのは、探偵編が若干無駄に思えるから。

正直探偵編の蘭子が事件に絡むまでの流れは、半分でいいと思う。

 

②謎めいた密室、壮大なトリック、予想できない犯人

 

おそらく、ここまでスケールが大きいのにしっかりと筋が通っていて見事なトリックは、後にも先にもこれだけなのではないだろうか。

ドイツ編とフランス編を読み終えた時点では、絶対に論理的に説明できない、と思ってしまう。なのに解決編では、しっかりと説明されてしまう。本当にすごい。

ただ解説で「トリックから物語を書いた」とあるように、これだけのトリックや密室を使った理由についてはちょっと納得しづらい。

 

③中村警部が出てこないからか、優秀な警察

 

中村警部とは、このシリーズに出てくる警察で、階級は警部。

50代くらいで丸い顔に丸い体、ハゲ上がった頭と口髭が特徴である。

主人公たちからの信頼も厚い設定だが、いかんせんヘッポコ。

毎回事件が起きては蘭子を頼り、捜査の方向性や何をすべきか指示を仰ぎ、私の手で必ず解決してみせる、と息巻く。

(もちろん解決するのは蘭子で警部はその推理に驚くだけである)

 

"その中村警部"がこの作品に出てこない。

代わりにドイツやフランスの警察官が出てくるのだが、彼らは普通に優秀で責任感の強い警察官である。特別優秀なわけではないが、よくある"ぶっきらぼうで態度は悪いが責任感のある警察官"として描かれている。

へっぽこ警察を期待していると、少し寂しい。

 

 

以上が感想のまとめとなる。 

本格ミステリが好きなら、ハードルは高いけどぜひ読んでほしい。

むしろ読まない理由は”本屋でもブックオフでも売ってないこと”くらいしかない。

(私はそれで全然読めずにいました。)

ハードルが高い分、ページ数が多い分、スケールが大きすぎる分、謎が深すぎる分、解決編における名探偵・二階堂蘭子の推理に酔いしれることができる。

欲を言えば、シリーズ物だから一作目の「地獄の奇術師」だけでも読んだ方が楽しめる。

なぜなら「人狼城の恐怖」がすごすぎて、この後普通の本格ミステリを読むと物足りなく感じてしまうから。

私が現在、そう感じて寂しくなっているように。

 

せっかくの読書の秋。

これだけ読み応えのある作品を、どっしり腰を据えて読んでみるというのも、楽しいものです。